2012年8月2日木曜日

今宵の月のように

 大きな月が出ている夜は、世界がいつもよりほんの少しだけ明るい。

 昼間はさんさんと太陽を浴びて元気にしている植物も、夜は月の光に包まれて、静かに眠っているように見える。ほの白い光の下では、川面も銀色に輝く。太陽とも電燈とも違う、静かで神秘的な光。

 ある夏の夜、友人がメールで写真を送ってきた。花なんかにちっとも興味がないはずのその人が、送ってきたのはその夜咲いた、真っ白い大輪の花の写真。大切に育てたのだと言う家の人が大喜びしていたので、私に送ってみたそうだ。

 夏の夜に、その一晩だけ花を咲かせる不思議な植物、月下美人。透き通ったような純白の花びらは、さぞ月の光に映えたろう。友人は、ちょっとこわいと言って笑った。

 送られてきた写真、電話で少し話をした。美しさもこわさも、そのままを手に取るように感じられた気がした。同じ月の下で。

 携帯電話を片手に持って、思わず見上げた夜の空。その夜の月は、満月に少しだけ足りなかった。ちょうど今夜の月のように。





画像;花の図書館 http://hanaya87.com/library/ 



月下美人 
 
メキシコ原産のサボテンの仲間。 
夜八時ぐらいから花を開かせ、数時間でしぼんでしまう。
そんな姿からか、儚さを思わせる花言葉をたくさん持つ。

月下美人とは思い切った花名だけれど、この花によく似合っている。