知り合いが、行きつけの店に絵をあげたのだと話していた。亡くなったお父さんの気に入っていた絵なのに。もったいない、と言うと、この絵は、誰かに見てもらわないと意味がないから、と、ちょっとだけ寂しそうにその人は笑った。
11月、花展の会期中着物を着て過ごした。それは、私に着物の着方を教えてくれた人が貸してくれた、「私が20代の頃着てた着物」だった。着物なんか借りられないと言うと、その人は本当に素敵な笑顔で言った。「着物が喜んでるわ」。多分笑う場面だったのだろうけれど、涙が出そうになって困った。
水仙をいけると、いつも誰かに見てもらいたくなる。多分、私は水仙がとても好きなのだと思う。
生花 五行格